一流と二流を分けるもの〜何が治療結果、予後を左右するのか〜

ラグビーW杯がイギリスのイングランドで開幕。

日本は初戦、優勝候補の一角と言われている強豪の南アフリカと対戦し、34対32で見事逆転勝ちを収めた。

「なぜ巨人・南アを日本の小兵が倒せた? ラグビーW杯の“80分間すべて奇襲”!」(Number web 9/21/15)

大金星というべきか大番狂わせというべきか。ラグビーはフィジカルの差がそのまま現れる。だからまぐれが起こりにくい。そう日本代表は、まぐれや奇跡ではなく、勝つべくして勝ったのだ。

勝つ為に真剣に努力し、、チャレンジし続けた4年間。いや1991年の初勝利から数えると24年か。

歴史を変えるべく努力を積み重ねたラグビー日本代表の心意気に心から拍手を送りたい。人間やってやれないこと等何もない。

昨日は勝って久しぶりに泣かせてもらった。我ながらこんな歳にもなって涙が溢れてくるとは思いもよらなかった。同じ思いをなさった方も多くいらしたのではないか。ラグビーをやっていて良かった。。心からそう思える、日本のラグビー経験者として本当に誇りが持てる試合だった。

練習は不可能を可能にするかもしれないが、言うだけなら簡単だ。先の見えない中、そこをきっちりとやり切ったところがエディ・ジョーンズHCの手腕。何ごとも周到な準備とやりきる行動力と信念、ということだろう。

実は私は高校時代にラグビー部に所属し、最初に留学したミシガンでもミシガン大学のクラブチームでプレーをしていた。

そこでチームのキャプテンのサムが当時ミシガン大学歯学部補綴科のレジデント(今の私と同じ立場)ということもあり、歯科医師という職業そのものに興味を持ち、歯科医師となる人生に賭けた。

高校時代ラグビーをしていなければ、サムとのミシガンでの出会い、歯科医師になろうと思ったかどうか。

まさにラグビーがつないでくれた人生。

ただ最近はそうした人生を変えるような出会い以上に、ラグビー日本代表に思い入れがあるように感じている。

それはラグビー日本代表のここ数年の活動、20年以上勝利に見放されながらも、己れの可能性を信じ前に進んでいる姿を、この留学の3年間、いや自分自身を人生の過程そのものに重ね合わせているからなのかもしれない。

あらゆるものを犠牲にして留学を目指し、一人で何とかしなければならない状況の中で、毎日自分の出来ることに全力投球し、厳しい毎日を乗り越えて来た。もう20年にもなろうか、日本ラグビー界の黒歴史とそのまま重なってしまうのだ。

先が見えない、勝てるか分からない、そういう状況をわかっていてなお、努力を続けることがいかに難しいか苦しいことか。

本日のスコットランド戦は、南アフリカ戦の疲労が残っていたせいか、判断ミスと反則が重なり、プレーに精度を欠き残念ながら敗れてしまった。

判断とプレーが正しくないと、うまくいかない、勝てない。これは歯科という仕事でも、本質的には同じだろう。

診査診断(判断)と一つ一つの手技(プレー)が少しでも狂うをと結果は全く予期せぬものになる。つまりうまく咬めるようにならないし、長期的に期待していた予後、結果とは全く違う方向に進んでしまう。


「神は細部に宿る」と言われるが、材料の性質、取り扱い方法はもちろん、患者さんの些細な状態の変化や特徴を見逃さない鋭い観察眼と診断力患者さんの状況に応じてほんの数ミリの手技を具現化出来る精密な技術、スキル。

幅広い知識を持ち理論を深く理解し、その上でさらに豊富な経験に基づき眼に見えないレベルで、ベストな治療オプションを選択し治療出来るか、そこに一流と二流の差があらわれる。

さて、ラグビーワールド杯。南アフリカ、スコットランド戦を終えて1勝1敗。南アフリカの勝利はもちろんだが、何より日本代表の選手達が充実したワールドカップでの日々を過ごしている様子が伝わってくる。


日本代表の予選プールは残り2試合、次回の試合は来週土曜日のサモア戦。個人的には実力的にはサモアがやや格上だと思われるが結果はいかに。このまま勝ち進んで決勝トーナメントに進出して欲しいところだが、とりあえず引き続きワールドカップの夢舞台を楽しむことにしたい



白 賢