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ニューヨークに戻って来て5日。まだ大学では3日間しか診療してないが、7月から新学期が始まり、新しいレジデントが加わったせいか、クリニック内が妙に慌ただしい。
私たちのプログラムが開始されるまでここで働いていたジョアンが7月からマネージャーに3年ぶりに復帰した。まだ3日しか一緒に働いていないが、もう驚く程仕事が出来る。すべてが素早く正確。少し前までマネージャーだった女王様気質のイーロンにまるで家来のように扱われていたこの3年間は一体何だったのだろう。。
ニューヨークで確信したことが一つある。それは、仕事が出来る出来ないと、人種、性別、年齢、肩書き(役職やポジション)、学歴(勉強が出来る出来ない)は全く相関関係がないということ。
あらゆる人種、性別、LGBT、文化すべてが入り交じるニューヨークだからこそかもしれないが、そういった偏見や先入観がさらになくなった。NYUの補綴科を背負って立つであろう最年少34歳のYoung starはゲ○だが、頭もキレ、仕事もデキるし思いやりがレジデント全員から尊敬されている。
こんなに頭のいいヒトがこの世にいるのか、と思わせられるファカルティの一人は管理職なのに、こんなにマネジメント能力がないのか、と思わせられる程、管理能力が。。いや、あえて放棄しているとも言える。マネジメント出来ないヒトが上司になると下は悲惨だ。
一方、経験豊富で優しく懐深い人気ナンバーワンのファカルティは最高齢73歳である。臨床はもちろん教育や研究に命を燃やす、一番ギラギラしているビックショットも72歳。
ニューヨークでなければ、これだけ多様性に富むファカルティに出会えなかっただろうし、ニューヨーク大学歯学部が特別政治色の濃い組織、ということもあるだろうが、こういう経験は出来なかっただろう。
私は早くから開業し、まともに組織の一員として働いた経験も浅かったので、非常にいい経験になっている。いや、そう思わないとやってられないというほうが正確かもしれないが、とにかく組織の論理というものがこの世に存在していることだけは理解出来た。
もともと海外の人々、とりわけアメリカ人は、ヒトとして気に食わない人間には上司であろうと、遠慮なく自分の意見をぶつける、自己主張するイメージがあったが、全員がそういう感じでもなさそうだ。
まともに相手をするのもバカバカしいと思っているのか、絶対的な権限を持つボスには逆らわない方がいいという判断なのか不明だが、皆自己主張や衝突を好まず、当たり障りのないように接しているのは意外だった。
もちろん、聞いた話によると、他の科や他大学では、歯学部長に直訴の手紙を書いたりして、直属のボスのクビにしてしまうレジデントもいるようだ。そういうことをするのはほとんどが女性であるところはいかにもアメリカらしい。
いずれにせよ、組織とは得てして窮屈なものである。そんな何かもが自分の思い通りにいかないなかで、まわりを巻き込み、結果を出し続けられる人材こそがプロフェッショルなのであろう。