サラリーマンと自営業



日本滞在最終日の夜は、大学時代の同期と焼き肉。アメリカの熟成肉も最近日本ではブームらしい。どうでもいい話だが、やはり日本式のサシが入った焼き肉の方が個人的には好きかもしれない。

歯医者になる前に通っていた慶應の同期は基本的に文系学部出身なので、当然私以外は全員サラリーマン、会社勤め。一応世間的には一流大学の体育会系組織、ということもあり、ほぼ全員が超一流企業に就職するような環境だったので、就職しないで歯学部を再受験する、歯医者になる!と宣言した時にはそれはもう反対された。もう20年も前の話だ。

当時から私が言い続けてきたのは、サラリーマンと自営業、人生はトレードオフなので、どちらか一方が良いと言っているのではなく、それは人種の違いのようなものだということ。人種が違えば、文化や風習、考え方も異なる、ということは当然生きて行く上で必要となるスキルや考え方も異なる。例えば、会社勤めの場合、基本的には出来るだけスタンドプレーにならないよう、目立たないような言動行動が必須だが、自営の場合、遠慮していても誰も何も評価してくれない。待っていてもお客さんは来ない、という意味合いではクリニックの場合も同じで、やや大げさになってもアピールしていかなければならない。結果的に、ライフプラン、キャリアデザインも全く違ってくる。

本当にずっと言い続けて来たことだが、最近ようやく理解されたように思う。あと10年もすれば、会社から子会社に出向し、60前後で定年、その後は老後の生活が待っている訳だが、35年以上に及ぶ会社勤めの間には厚生年金などの手当や貯蓄、退職金も十分あり(定年前に出向などで給与が減る可能性はあるが)、生活に困ることはないだろう。

一方こちらは、厚生年金も退職金もなく、若いうちから体調を崩したりすれば普通の生活するおぼつかなくなる。もちろん医者の40過ぎなんて、やっと仕事が分かってきたレベル。一人前の歯科医師としてこれから、という年代であと30年は第一線で働くことが出来る。

繰り返すが、これはどちらの方がいい、という話ではない。会社勤めをするなら、それにふさわしいスキルや能力があり、それは歯科医の場合も大学に勤務する立場であれば大差はないかもしれない。いや職業の差よりも、組織に属するか、自分で組織作りをしトップとして率いるのか、の違いのほうが大きいように思う。

もしこれから就職活動を始める学生さん、国家試験に合格し歯科医師としての社会人生活を始める研修医の方がこのブログを読んでいるならひとこと言いたい。

「自分の置かれた環境」と「自分の能力」を最大限発揮できる道を意識して選ぶべき。

学生と違って、社会人としての選択に正解はないが、ただ自分の選んだ道を正解にすることは出来る。その創意工夫の差が10年、20年と経つに従って大きな差となって如実にあらわれてくる。おそらく人生とはそういうものだ。