クリスマスで華やかな雰囲気に包まれているニューヨーク。今週末は、アメリカの補綴界、いやもしかするとアメリカの臨床系の学会の中では最も格式高く、伝統のある(と個人的には認識している)学会であるGNYAP(The Greater New York Academy of Prosthodontics)が開催された。
大会前日は、南カリフォルニア大学歯学部長のドクター・サダーンによる教育講演からスタート。内容はオールセラミックスの特性やその適応について。普段学んでいる文献と同じような論文のレビューから、臨床の現場での適応まで、自身の臨床経験に基づいてレクチャーだけでなく、参加したレジデント達と活発な意見交換を交えながらの講演だった。
そして、その後は、懇親会。ACP(アメリカ補綴学会)でニューオリンズに行って以来、久しぶりに仲間達やファカルティと談笑。普段忙しすぎて、ほとんど話をする時間がないので、こうした交流の場は本当に貴重な意見交換、情報共有の場合となる。
会場には、大会の演者はモデレーターなどが一同に集まることもあり、著名な臨床家達に直接意見が聞ける、質問をぶつけられるというメリットの一つだ。
プログラムが始まる前に、 アメリカのとある大学でファカルティをされている日本人の方から、同じ大学の補綴科レジデントでも、ニューヨーク大学の補綴科レジデントと、そこらあたりの大学のレジデントでは、得られる学びもネットワークも全く違うから、と言われたことがあったが、その意味が少し分かったような気がする。これだけのメンバーの中に、こうした集団に所属出来るということはなかなかないことだろう。あと自分のやる気と能力次第で何でもやれるという気持ちになってくるから不思議なものだ。
実際、6月にキャリアフォーラムで講演したいたドクター・ザムゾックに話かけ、近々彼のオフィスに見学に行かせてもらえないか、実は今度帰国したら日本で専門医によりSpecialized された歯科クリニックの実現を模索していると想いを打ち明けてみた。ネットワーキングの大切さを説いた彼の前回の講演を実践してみたわけだが、すると快く引き受けてもらえることになった。ちなみに彼はドクター・デニス・ターナーやドクター・チューらとともに共同でマンハッタンにオフィスを構えているSpecialized Dentistry of New Yorkのメンバーの一人である。
今年のGNYAPは、60回記念大会ということもあり、例年にまして参加も多く、演者のレベルも高くこれまでにないくらい充実した内容だった。
これは毎週火曜日に大学で審美歯科治療のレクチャーをしているファカルティであり、大会の実行委員、プログラム構成の責任者でもあるドクター・チューのネットワークと臨床家を視る眼、によるところが大きいのだろう。
会場は、ジャズのコンサートホールでも有名なタイムワーナービル5階にあるローズホール。いつ来ても素晴しい眺めで、ここに来ると一年に一度くらいはニューヨークに戻ってこようかなという気分になってくる。
初日の午前に行われたタフツ大学のウェバー教授、ロマリンダ大学のカーン教授らの講演は、自身の最新の臨床研究の結果をもとにプレゼンテーションを行われ、腕にも頭脳にも覚えのあるさすがのニューヨーカー達も唸る、まさに最先端と言ってよい素晴しいものであった。見方を変えると講演する側の真剣さが、そのプレゼンテーションの迫力から伝わってきた。
ランチを挟んで、午後の講演に移るのだが、このようにランチの時間中もものすごい人数がロビーに集まり、お互い積極的に交流し、ネットワーキングを図っている。アメリカはとにかく「信頼社会」なので、こうして定期的に学会に参加し、社交的にふるまうことが必須である。
午後の講演には、この8月にシェードテーキングと口腔内写真の撮り方に関するセミナーでお世話になった技工士の相羽直樹氏の講演があった。どうすればよい写真を撮影出来るのか、カメラの構造や撮影環境等、緻密に計算され練り上げられた内容であり、細部を追求させたら日本人が間違いなく世界一だな、と会場にいた多くのファカルティから私自身も声をかけられ、日本から来た歯科医師としても、誇らしく励みになる講演であった。
二日目も引き続き、ハイレベルの講演が続いた。特にドクター・ロドリゲスのメカニカルな側面とHistologicalな側面から即時埋入インプラントを論じたプレゼンテーションは、この1年間かけて読み続けていた論文とLit reviewの授業での学び、臨床の現場での実践を結びつけるような内容であり、これこそ留学して時間をかけなければ体得し得ないものだと感じた。
今回年末に開催するセミナーでは、臨床に関する話はほとんど行わない予定だが、レジデンシープログラムにおける教育の本質的な狙いは何か、を説明する意味で、少し取り上げてみるつもりだ。
今回3日間、計18講演を 聴き終えた現在の心境、気づきとしては、世の中に何かを伝える、発信するということの意味を知ることが出来たということだろう。簡単にいうと、実験を行い、その結果をまとめて論文を書くことも、システマティックレビューを書くことも、臨床のケースプレゼンをすることも、こうした学会で教育的な講演をすることも、どうやらその「本質」に変わりはなさそう(やり方、方法論は同じ)だということ。ただ、日本とは教育システムそのものの成り立ちが違うので、海外で発表するとなると、こちらのやり方に合わせする必要があるし、論文にするにしても然りということだろう。
そして、世界最高峰のレベル、これ以上はない、というレベルがどれくらいのものなのかはっきり分かり、目指すべき到達点が見えたので、これからはそこを目指して実践あるのみだな、といったところだろうか。ネットワークも大切だが、まずはいち歯科医師として何が出来るのか、その一つ一つの仕事のクオリティや結果が、最終的にはこうしたプレゼンテーションや評価となって表れるに違いない。
クリスマスの盛り上がりをみせるニューヨークの街の雰囲気に合わせるように、プログラムの忙しさもテスト、臨床、技工、とピークを迎えているが、残り2週間を残すのみとなった。引き続きやるべきことに集中し、最後の力を振り絞って乗り切ろうと思っている。
大会前日は、南カリフォルニア大学歯学部長のドクター・サダーンによる教育講演からスタート。内容はオールセラミックスの特性やその適応について。普段学んでいる文献と同じような論文のレビューから、臨床の現場での適応まで、自身の臨床経験に基づいてレクチャーだけでなく、参加したレジデント達と活発な意見交換を交えながらの講演だった。
そして、その後は、懇親会。ACP(アメリカ補綴学会)でニューオリンズに行って以来、久しぶりに仲間達やファカルティと談笑。普段忙しすぎて、ほとんど話をする時間がないので、こうした交流の場は本当に貴重な意見交換、情報共有の場合となる。
会場には、大会の演者はモデレーターなどが一同に集まることもあり、著名な臨床家達に直接意見が聞ける、質問をぶつけられるというメリットの一つだ。
クリニックでも御世話になっている前アメリカ補綴学会会 長のドク ター・バーゲン |
プログラムが始まる前に、 アメリカのとある大学でファカルティをされている日本人の方から、同じ大学の補綴科レジデントでも、ニューヨーク大学の補綴科レジデントと、そこらあたりの大学のレジデントでは、得られる学びもネットワークも全く違うから、と言われたことがあったが、その意味が少し分かったような気がする。これだけのメンバーの中に、こうした集団に所属出来るということはなかなかないことだろう。あと自分のやる気と能力次第で何でもやれるという気持ちになってくるから不思議なものだ。
実際、6月にキャリアフォーラムで講演したいたドクター・ザムゾックに話かけ、近々彼のオフィスに見学に行かせてもらえないか、実は今度帰国したら日本で専門医によりSpecialized された歯科クリニックの実現を模索していると想いを打ち明けてみた。ネットワーキングの大切さを説いた彼の前回の講演を実践してみたわけだが、すると快く引き受けてもらえることになった。ちなみに彼はドクター・デニス・ターナーやドクター・チューらとともに共同でマンハッタンにオフィスを構えているSpecialized Dentistry of New Yorkのメンバーの一人である。
今年のGNYAPは、60回記念大会ということもあり、例年にまして参加も多く、演者のレベルも高くこれまでにないくらい充実した内容だった。
これは毎週火曜日に大学で審美歯科治療のレクチャーをしているファカルティであり、大会の実行委員、プログラム構成の責任者でもあるドクター・チューのネットワークと臨床家を視る眼、によるところが大きいのだろう。
会場は、ジャズのコンサートホールでも有名なタイムワーナービル5階にあるローズホール。いつ来ても素晴しい眺めで、ここに来ると一年に一度くらいはニューヨークに戻ってこようかなという気分になってくる。
初日の午前に行われたタフツ大学のウェバー教授、ロマリンダ大学のカーン教授らの講演は、自身の最新の臨床研究の結果をもとにプレゼンテーションを行われ、腕にも頭脳にも覚えのあるさすがのニューヨーカー達も唸る、まさに最先端と言ってよい素晴しいものであった。見方を変えると講演する側の真剣さが、そのプレゼンテーションの迫力から伝わってきた。
ランチを挟んで、午後の講演に移るのだが、このようにランチの時間中もものすごい人数がロビーに集まり、お互い積極的に交流し、ネットワーキングを図っている。アメリカはとにかく「信頼社会」なので、こうして定期的に学会に参加し、社交的にふるまうことが必須である。
午後の講演には、この8月にシェードテーキングと口腔内写真の撮り方に関するセミナーでお世話になった技工士の相羽直樹氏の講演があった。どうすればよい写真を撮影出来るのか、カメラの構造や撮影環境等、緻密に計算され練り上げられた内容であり、細部を追求させたら日本人が間違いなく世界一だな、と会場にいた多くのファカルティから私自身も声をかけられ、日本から来た歯科医師としても、誇らしく励みになる講演であった。
二日目も引き続き、ハイレベルの講演が続いた。特にドクター・ロドリゲスのメカニカルな側面とHistologicalな側面から即時埋入インプラントを論じたプレゼンテーションは、この1年間かけて読み続けていた論文とLit reviewの授業での学び、臨床の現場での実践を結びつけるような内容であり、これこそ留学して時間をかけなければ体得し得ないものだと感じた。
今回年末に開催するセミナーでは、臨床に関する話はほとんど行わない予定だが、レジデンシープログラムにおける教育の本質的な狙いは何か、を説明する意味で、少し取り上げてみるつもりだ。
今回3日間、計18講演を 聴き終えた現在の心境、気づきとしては、世の中に何かを伝える、発信するということの意味を知ることが出来たということだろう。簡単にいうと、実験を行い、その結果をまとめて論文を書くことも、システマティックレビューを書くことも、臨床のケースプレゼンをすることも、こうした学会で教育的な講演をすることも、どうやらその「本質」に変わりはなさそう(やり方、方法論は同じ)だということ。ただ、日本とは教育システムそのものの成り立ちが違うので、海外で発表するとなると、こちらのやり方に合わせする必要があるし、論文にするにしても然りということだろう。
そして、世界最高峰のレベル、これ以上はない、というレベルがどれくらいのものなのかはっきり分かり、目指すべき到達点が見えたので、これからはそこを目指して実践あるのみだな、といったところだろうか。ネットワークも大切だが、まずはいち歯科医師として何が出来るのか、その一つ一つの仕事のクオリティや結果が、最終的にはこうしたプレゼンテーションや評価となって表れるに違いない。
クリスマスの盛り上がりをみせるニューヨークの街の雰囲気に合わせるように、プログラムの忙しさもテスト、臨床、技工、とピークを迎えているが、残り2週間を残すのみとなった。引き続きやるべきことに集中し、最後の力を振り絞って乗り切ろうと思っている。