KEIO Men's Lacrosse Team, US tour 2014 Day 4:番外編 Visiting KEIO Academy of New York

4日目はオフを兼ねた移動日である。予定にはなかったが急遽、慶應ニューヨーク校へラクロス部の練習を見学しにいくことになった。部内にはニューヨーク校でラクロス部を創ったというニューヨーク校出身の部員が数名在籍している。

グランドセントラル駅に集合し、屋台でニューヨーカーのソウルフード、チキンオーバーライスを買い込み準備万端、メトロノースに乗り込む。ニューヨーク校のあるハリソンまで約1時間、天気も良くちょっとした遠足気分だ


その後タクシーを乗り継ぎ、ニューヨーク校へは昼頃到着。ご覧のように素晴らしい広々とした環境に、自分が過ごした高校時代とのギャップの大きさを感じざるを得ない。



簡単に自己紹介や挨拶をすませ、時間が少しあったので簡単にではあるがクリニックを実施した。



正味30分ほどのあまりにも短くシンプルなクリニックだったが、こういった普及育成活動の重要でだからこそ、遠征期間中の貴重なオフにわざわざ電車を乗り継いではるばる駆けつけたのである。



どの大学でも、一年生の育成強化は最重要課題であるという認識で一致しているだろう。育成の現場に携わったことがある者ならが、こんなもやしのようにやせ細った少年達が、数年もすれば立派なプレーヤーとして活躍するようになることを誰もが知っている。かと言って、スキルや知識を手取り足取り教える必要はなく最低限のポイントを伝えるくらいで十分だ。





何を教えるというより、必要なのはきっかけを与えてあげること。大学も卒業生も君たちをいつでも「見守っているよ」という姿勢を見せてあげるだけで良い。あとは選手自身がやる気になり、ラクロスが面白いと感じるようになれば、自主的に練習に取り組むようになっていく。「考え方」を教える、伝えるのはスキルを教えること以上に重要だ。詳細は省くがそれは、スキル、腕の良しあしが評価の基準になりがちな歯科医療においても当てはまる。



今回元日本代表、現役の日本代表選手とともにラクロスをした経験は、彼らの中できっとかけがえのない思い出になり、本格的にラクロスに取り組む動機になっていくだろう。



と大上段に構えてみたものの、今回参加したコーチ陣、卒業生の誰もがそれほど真剣に高校生を指導してあげようと思っているわけではなく、基本的にはノリで、自分達が楽しいと思えるからやっているだけだ。少なくても今回ニューヨーク校に出向いた我々はそうだ。本音を言うと、卒業生は久しぶりに母校に行ってみたかっただろうし、OBOGもニューヨーク校がどういうところで、どういう学生がいるのか興味があったから参加したまでだ(そもそもこの遠征への帯同も、イマドキの大学生はどんなことを考え、どんなことに興味があり、どんなことに夢中になっているのか知りたいと思った、一言で言うとそんな好奇心に従ったに過ぎない)。


実際、日本の高校とは違いすぎる環境を羨ましく思ったが、ニューヨーク校の高校生達は思ったよりも真面目でおとなしそうな感じだった。むしろ大多数はこの閉鎖された環境で勉強と部活に明け暮れる健全な高校生活を送っているようにみえた。聞くところによると年によっては1割弱の学生が卒業出来ないようで、学生の質も出口で保たれているところはいかにもアメリカらしい。



今回久しぶりに現役の学生や後輩達との交流を通じて、自分自身も色々な刺激をもらい、こういった機会を与えて頂いたことにむしろ感謝している。高校ではラグビーに青春を捧げ、大学ではラクロスに熱中していたが、現在の歯科医という職業には何ら関係がなく、そんなことだから未だにレジデントなんぞやっているのだと考えられなくもない。

そういう意味では随分遠回りをしたものだ。脱線だらけの人生であることは、自分でも自負しているが、こうした仕事とは別の人間関係やコミュニティを持っていることが、そのまま自分の人生に幅を持たせ奥行きを与えてくれた。

人生を生きていくのに必要な数えきれない程のスキルを身につけることが出来たし、ストレートな道を選択していたならば、決して得ることのなかった出会いや経験を積み重ねることが出来たということも事実だろう。実際、最近10年ぶりに再会する当時の教え子、選手達も30を過ぎ、仕事では起業やMBA留学する者、会社でも重要なポジションを任されている者もおり、話を聞いているだけで、池に投げた石の回りに出来る波紋のように自分の世界や見識がみるみる広がっていくのが実感できる。


スポーツの教育的効果、などと偉そうなことをいうつもりはさらさらないが、高校生の時ラグビー部にも入らず、慶應にいかずラクロスもせず、そのまま歯科医師になっていたとしたら、刺激的な人々に囲まれて人生を送ることはなかっただろう。またやや唐突だが、きっとこのまま日本に帰らず、アメリカに残る選択をしていた気がしている。ニューヨークでの生活もさすがに世界中の人々を惹き付けるだけあってエキサイティングだ。世界中から集まった人々の熱気とエンターテイメントに溢れたこの街で、休みの日にはミュージカルやオペラ、美術館をみて歩き、メジャーリーグやフットボール三昧の生活も悪くない。



何よりも補綴専門医としての日本で考えられないほどの社会的地位や収入が約束され、世界中の誰もが憧れる、自由で平等な国アメリカで豊かな生活を送れるのである。もちろんアメリカでの生活も魅力的だし、将来的にはまた戻ってくる可能性も大いにあるが、今このタイミングではやはり帰国することがベストな選択肢だと思う。その真の理由にはここでは触れないでおくが、自分には家族や愉快な仲間と仕事が終わったら美味しい和食に舌鼓を打ち、週末にはラクロスやラグビーで母校の応援をしたり、ふらっと温泉にでも行ってのんびりしている方が性に合っているというのは間違いない。何はともあれ、思い出に残る今回の東海岸遠征への帯同だった。