2014年9月13日土曜日

Prosthodontic Review Course Day 2 in Chicago


適切な表現か分からないが、トップ中のトップ、アメリカ補綴学会でリーダーシップを発揮している超一流の教授陣は、本当に地に足がついているな、というのがまずは正直な感想だ。

美しいシカゴの街並み

 臨床はもちろんだが、研究にしても教育にしても仕事に対して余裕があるように感じる。アメリカでも政治的な理由で奨学金やグラントの配分が決まったりするが、長く第一線で活躍するには真の実力が必要、ということだろう。

今回初参加のレビューコースの内容は全体的に知識やスキルの整理が半分、新しい論文のインプットが半分、といった感じで、2日間の講演で使用したスライドは合計1200枚以上、参照論文は300本程で初めてみる最近の論文はその2割程か。Evidence basedと題したレビューコースで咬合に関してはエビデンスはない!と言い切っていたのが印象的だった。ジルコニア、審美等ももちろん扱うが、それらがメインのトピックになることはない。それは補綴の学会だから、というだけの理由ではないと思う。日本ではどうだろうか。



「咬合」理論にエビデンスはないが、その後で、Evidence based medicineの本質についてもレクチャーする。そこにアメリカの大学教員、臨床家たちの「正常な」バランス感覚、謙虚だが科学としての歯科医療を追求していく姿勢に、歯科医師としてのプライドを感じる。声高に経験重視を唱えるわけでもなく、理論ばかりの窮屈なスタンスでもない。現実を直視し受け入れつつも、あえてエビデンスにこだわっていくスタンスは好感が持てる。



個人的には、日本の大学の先生方に期待しているし応援しているが、日本ではシステムのひずみがもろに大学の個々の教員を直撃していて、経済的にも身分的にも時間的にも厳しい環境に置かれているのが現状だ。特に優秀な人材ほど仕事が集中してしまい、疲弊している姿は痛々しいとすら思えてしまう。そしておそらく、大学の「教授」に権力や責任が集中し過ぎてしまっているのもあるに違いない。少なくても責任領域を、研究、臨床、行政、教育の4つくらいに分けるべきなんだろう。そんなこと大学にいる方々も分かり切っていると思うので、ここで触れるまでもないが。


その点アメリカの臨床教育の現場を担うファカルティの待遇はすこぶる良い。年収はもちろんだが、リタイア後の年金や保険などのサポートも手厚い。そのあたりから改善していかないと、日本の歯科医療の発展も何もない気がしてならない。



さて、ここに2日目のメモの一部を掲載しておくことにする。レビューコースは学会ではなく、補綴科レジデントのスキルアップ、最新の論文のブラッシュアップが目的のコースで、講演のスライドも講演内容を録画したDVDも配布される。Dr.Goodacreに至っては、自身のプレップの動画を希望者にコピーして配布していた。だから、ここでいくつかスライドを紹介しても問題ないだろう。このブログをきっかけに、このレビューコースに興味を持つ方がいれば嬉しいし、何かの参考になれば幸いである。

最初の講演は、今回のレビューコースの主宰でもある、パシフィック大学補綴科チェアマンのサドウスキー教授。テーマは、Evidence-based Criteria for Implant Treatment Planning of the Completely Edentulous Patient.

下記内容について、エビデンスベースによる説明。

・上顎、下顎の Implant retained overdenture, implant supported over dentureの比較(設計、生存率等)

・オーバーデンチャーの設計の比較
 インプラント数、位置、埋入角度、リスクファクター等
 補綴の種類;オールオン4、バー、ロケーター等

・固定性インプラント補綴の設計の比較
 PFM、ジルコニア等材料間の違い、生存率、それぞれの利点、欠点

・イミディエイトローディングによるインプラント支持によるオーバーデンチャーの比較
 インプラント数、位置、角度、骨の密度、量、

・それぞれの補綴方法(固定性、オーバーデンチャー、材料、デザイン)の比較
 生存率、患者満足度、利点、欠点、適応等

メイヨークリニック、サリナス教授による講演。テーマは、Short term and long-term effects of Implant supported restorations for the Edentulous Patient.

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診査、診断、治療計画、治療、メンテナンス、それぞれの項目の重要事項をエビデンスベースでレクチャー。サドウスキー教授のレクチャーをさらに深堀した内容。

・残存した骨とインプラントの結合(オッセオインテグレーション)の評価

・治療オプションからどうやって治療方法を決定するか。所謂Decision making in treatment planning。上顎と下顎ではアプローチの仕方が全く異なることが、ポイント。特に上顎の解剖や状態が補綴デザインに影響を与える。

・ショートインプラント、インプラント数、埋入位置の形(アーチ?スクエア?)によるメカニカルに違いが生じる。AP splitやインプラント体の材質、径、埋入角度、患者の病歴(オステオポロシス、喫煙、糖尿病)なども影響あり。

・オールオンフォー
生存率、適応、外科手技、成功への鍵

・イミディエイトローディング
荷重(上顎、下顎)、埋入のプロトコール、生存率。

・補綴デザイン
 べース:メタルベースかWrapデザインか。
 材質:ジルコニアかメタルか。emaxも。ジルコニアが少しずつポピュラーになりつつあるが、Technique sensitiveであることは間違いない。ケースによってemaxをveneerに使ってもよい。

・Castか、CAMか?
 チタンも使う。フィットはCAM使用が圧倒的に良い。

・メカニカルな失敗について、1991年以降のComplication rateの分析。
 Failureの内容:遠心に埋入されたインプラントの脱離、補綴の失敗が多い。インプラントの破折は少ない。
 人工歯の摩耗、フレームの破折、アバットメントスクリューのゆるみをどうやって防ぐのか。
 一番多いのは、veneerの破折。
 Overdentureの失敗例

・Overdentureのベースに使用するメタルの強度の比較
 チタン、コバルトクロムなど、TiAl6V4が一番良い
  3.5x3.5,4x4のバーデザインを使用推奨

・Short termの影響
 骨吸収、インプラントの脱落、発音障害等

・Long termの影響
 アタッチメントの摩耗、咬合力の増大、インプラント周囲炎、ベニアの破折、骨の過成長等

・29年間のLongevity in mayo clinic紹介
 インプラントと補綴の成功率がかなり異なる(カプランマイヤーのグラフ)

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・生物学的失敗
骨吸収、インプラント周囲炎

すべてエビデンスベースでのレクチャーだが、実際のオペや補綴は口腔外科出身のサリナス教授自身が行っているので、説明がわかりやすい。

コネチカット大学の補綴科チェアマン、テイラー教授の講演。彼はアメリカ補綴会の重鎮で、多くの咬合に関する研究や論文を発表している。テーマは、Occlusal concept for conventional and implant prostodontics.

基本的に咬合論に、エビデンスはない!しかし、エキスパートの話は聴いておこう、という話からスタート。
Balanced occlusion、Canine guidance関連論文の紹介。義歯に関するもはいくつくかあるが、エビデンスが確立されていないからこそ、慎重に治療を進めなければならない。

と言いながら、話は主に咬合の話ではなく、インプラントアバットメントのデザインとオーバーローディングのことだった。

問題は、インプラント関連の咬合の研究はさらに少ないこと。現状は、天然歯の咬合論をインプラントに当てはまめているが、歯とインプラントは支持メカニズム、咬合力の配分も異なることか。

・インプラント埋入時のキーファクター
 1.対合歯の種類
 2.歯槽堤のサイズ、大きさ
 3.歯槽骨から咬合平面までの距離
 4.歯槽堤の位置
 5.骨質と量 
 6.パラファンクション

・対合歯の種類
 義歯(歯肉)、歯(歯根膜)、インプラント

・Systematic reviewの紹介
 インプラントの数と長さ、インプラント/クラウン比、ショートインプラント
 正直に言って、数と長さについてのエビデンスはない!
 パラファンクションの患者のインプラント:ロストする可能性が高い

・Progressive loadingとは
 
・Malofancutionとインプラント失敗の関係

・External tapered とInternal tapered abutmentの違い(長所、短所)



午前中の最後は、Eckert教授。メイヨー大学のチェアマン、JOMIの編集責任者でもある。テーマは、Rethinking the EBD Hierarchy, is the RCT really the standard? 
From an editor’s perspective.

臨床論文の構造、メカニズムについて。
常識的な内容なので、そのままアップしておく。
Evidence Based Hierarchy
 Levels of evidence in 5 different categories  Therapy/Prevention, Etiology/Harm
 Prognosis
 Diagnosis
 Differential diagnosis/symptom prevalence study  Economic and decision analysis

Levels of Evidence
 Level 5: Expert opinion without Explicit critical appraisal, bench research or “first principles”
 Level 4: Case-series (and poor quality cohort and the case control studies)
 Level 3: Individual case control study
 Level 2: Individual cohort study
 Level 1: Randomized Controlled Clinical Trial

www.cebm.net
Evidence based medicine参照のこと。

AHRQ
歯科におけるRCTデザインについて
Let’s design RCT
 inclusion criteria  exclusion criteria  study design
 actual study
 bias identification

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午後の最初の講演はDr. Kucey, カナダのアルバータで開業する補綴専門医。講演のテーマは、Implant complications with partially edentulous patients.

インプラント外科、補綴とその合併症とメンテナンス方法に関する論文を豊富に紹介。

・AlbrektssonによるCriteria of success

・最初の10年とその10年では、成功率にかなり差がある。 By Lekholm
・FDPとSingle crownの10年生存率の比較 By Wittnebeen
・硬組織、軟組織のリモデリングに影響を与える主なファクターBy Touati

インプラントによる治療のゴールは、
Criteria of Success: Albrektsson et al (1986)
Replacement of missing teeth and contiguous structures to the original or matching condition in health and stability: teeth + tissues

Complications
1.Preoperative-
2.Intraoperative (a,b)-
3.Postoperative-
4.Restorative-
5.Postrestorative-
6.Recare & Repair-

引き続き、それぞれの解決方法について説明。ここがこのレクチャーのポイント。
スライドは、Pre operative complicationとsolutionについて。

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・Single posterior implant complication
・Single anterior implant complication
・Multipul teeth implants

・Implant Quality Scale (IQS): ICOI Pisa Consensus 2007

以下、論文について説明
・咬合力のインプラント周囲への影響
・インプラント周囲炎の分類
・インプラント周囲炎と骨吸収の関係
・インプラント周囲の骨の反応
・重度審美障害のあるケースでの留意事項
・インプラント患者のメインテナンスに関するガイドライン
いずれの著者も最も効果的な予防、メンテナンスに関するエビデンスがないことに言及しており、臨床的な経験をもとに指導している。

まとめとして、メンテナンスの評価方法として、以下の項目について言及していた。
1.兆候
2.軟組織
3.補綴物の安定性
4.X線像
5.咬合
6.隣接コンタクト
7.審美性
8.写真

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次にワシントン大学顎顔面補綴科のRubenstei教授による講演。テーマは、The Evolution of Implant-based Maxillofacial Prosthetic Rehabilitation.

最後は、アイオワ大学のスタンフォード教授、テーマは、The young patient presents with missing teeth: What do you do? Tooth replacement therapy in patient with congenital anomalies.

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