ラクロスW杯、観戦後記

男子ラクロスW杯の決勝は、前評判では不利と見られていたカナダがアップセットを果たした。カナダは絶えずボールを慎重にポゼッションし、USAに攻撃の機会を与えなかったことが勝利の一因となった。

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ただボールが全く動かない慎重な試合運びは、時として間延びしたつまらないゲームになってしまう。勝利に徹するからこそのボールポゼッションであり、タイムマネジメント、試合運びではあるが、独断と偏見であることを前提に言わせてもられるならば、ラクロス世界一を決める試合にしてはかなり物足りない、はっきりいってみていてつまらない、「勝ちにこだわるとこうなる」という典型的な試合だった。

もしかすると先日、サッカーW杯ドイツ対ブラジル戦でドイツ代表の、ブラジル代表の息の根を止めるような怒濤のオフェンスをみてしまった後だからかもしれない。とはいえ、こういったゲームプランは、あくまで弱者のゲームプランであって欲しい。

個人的な見解を言わせてもらうと、FILはルール変更を検討してもよいのではないだろうか。バスケットのようにクリア後、三分以内にオフェンスしないと攻撃権を自動的に失うなどである。もしそうなれば、オフェンス力があるチームが圧倒的に有利で、日本は世界大会でさらに厳しいことになりそうだが。

対照的に、今回大活躍だったイラコイ・ネーションズ。トンプソンファミリーを中心としたトリッキーかつアグレッシブな戦いぶりはラクロスの魅力、楽しさを十分披露してくれた。試合会場にあるイラコイ・ネーションズのグッズ売り場の盛況ぶりがその事実を物語っていた。今回の真の勝利者は彼らだったかもしれない。

今回8位に終わった日本代表は、4位オーストラリアとは初戦で1点差サドンデス敗れたこと、イングランドに勝利し、スコットランドにもオーバータイムでの敗戦であったことを考慮すると、実力的には4〜8位で、勝敗は本当に紙一重であったように思う。

勝利に徹して、ボールポゼッションやタイムマネジメントを優先するのか、今までのコンセプト通り、行けるところまでいく、ブレイク主体のラクロスを貫くのか。その方向性は現段階では知る由もないが、今回の対戦一つ一つのゲームプランから一つのゴール、失点、一つのパス、シュートの成否、一場面の各選手の判断に至るまで緻密な検証がこれからなされるだろう。

このW杯の結果を受けた後の日本国内での男子ラクロスの動向を、今まで以上に注目してみたい。あのようなロースコアに持ち込むようなポゼッションラクロス(?)は一昔前は、まだ一度も勝ったことがない東大や一橋(今はそういう志向でないとは思うが)もやっていた。さらに私が現役の頃も、最後はエキストラでしか点が取れない、、というチーム全体の現状認識があったので、最終的には、「絶対に反則をしない」、「逆にオフェンスはポゼッションを増やして反則を誘う」、「点を取ったらディフェンス、とにかく粘る」、そして「ギリギリで相手をかわして勝ち切る」、というチームコンセプトを徹底して慶應は全日本選手権三連覇を達成した。

もはや20年近くの前の話であり、現在の状況、しかもW杯と比較するのはナンセンスかもしれないが、ゲーム戦術の基本的なプランとして考えるならば、あながち的外れでもなかろう。大学生のゲームであれ、国を代表するチームの戦いであれ、リードしている場面、負けている場面に応じたゲームプラン、戦術は必要だ。

ただし、USAもカナダも攻めようと思えばいくらでも攻められるという事実を忘れてはいけないと思う。彼らはどんなゲームプランでも実行できる、というのがまず前提としてある。展開によってはそういう戦術もありかもしれないが、本質を見誤ってはいけない。

もちろん状況に応じたゲームプランを考えるいいきっかけにはなるが、こうした一試合の内容、試合展開の表面だけをマネするチームが増えて、日本のラクロスの時計が逆戻りするのだけは避けて欲しい。これからの日本ラクロス界のさらなる発展を遠く異国の地から切に願っている。

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