2014年5月22日木曜日

アメリカにおける補綴専門医と一般歯科医に違い

 GP(一般歯科医)と補綴科専門医はどう違うのか?


某歯科雑誌様から、こちらの歯科事情に関する情報提供を依頼されているのを契機に、色々とリサーチを進めている。


今週は、GPと補綴専門医をはじめとした歯周病や口腔外科専門医とGPは何が違うのか?何故GPは専門医を目指すのか?を友人はファカルティに診療の合間で質問していた。



特に補綴科、GPとそんなにやること変らないのでは?と思う方もいると思う。私は日本とアメリカの歯科教育の差、違いがはっきりと存在すると認識しているので、ここで学ぶ意義を理解しているつもりだが、アメリカの歯学部である程度システマティックな教育を受けた上でさらに、補綴科専門医を目指すどんな意義があるのか?私自身も明確な理由が掴めていなかったので、彼らの意見は非常に興味深く聞かせてもらった。


臨床の現場でいうと、たしかに明確な基準はない場合もある。補綴科専門医を標榜した場合、エンドや抜歯、修復などのGPが行う治療を行うことは法律で規制されているが、GPのクリニックでGPとして働く場合は、問題にならない。実際、週に2日は補綴科医として、あとの2日はGPのクリニックでGPとして働いている補綴専門医のファカルティもいる。そして週1日大学に教えにくるといった具合だ。


だから、補綴科専門医でも、普通にエンドや抜歯、修復を行っている補綴専門医もいる。おそらく、歯内治療専門医や矯正科医はその専門分野しか行わない場合がほとんどだろう。特に矯正は学部時に(少なくてもNYUでは)ほぼ経験しないので習得する機会が全くない、というのもある。


では、補綴科になんの意味が?と思われるかもしれないが、そこはやはりGPには超えられない、壁が存在すると断言出来る。私は詳しく聞いて回るうちに、GPと補綴科専門医の間には、埋められない深い溝というか、GPには超えられない高い壁があるとと感じるようになった。


それは、診査診断、つまり意思決定を行う上での思考の深さと幅広さ。そしてその的確な診断を実行しうる手技の正確さ、治療方法のオプションの多様さ。


GPは補綴学の領域に限っていえば、例えば、総義歯、部分床義歯、クラウンブリッッジ、インプラント補綴において、補綴学の科学的な背景まで習わない。つまり、少なくても歯学部生の段階では、論文は読まない、Evidence based dentistryっていうのは、あくまでも専門医のレベルに限った話である。


いや、歯学部教育において、わざわざすべてのトピックに関して論文を読んでいる時間はないと言った方が正確かもしれない。国家試験、模型実習や臨床実習でのリクアメントをこなすだけでも膨大な量だからだ。


日本の歯学部も確かに大変だが、アメリカの歯学部生がこなさなければならないリクアメントの数は日本の歯学部生の比ではない。臨床実習でクランブリッジ20本、総義歯4ケース、部分床義歯4ケースを大学5年生からの二年間で日本の歯学部生が全員終わらせることが出来るだろうか?


日本では大学院に在籍した当時の歯学部生の臨床カリキュラムを見るかぎり、歯学部6年生の1年間はほとんど国家試験勉強の対策に当てられていた。国立大学によっては国試対策は行わずギリギリまで臨床実習を行う大学もあるそうだ。今はどうなのか分からないので一概には言えないが、こちらでは、少なくても国家試験対策の講義は行われることはなく、各科の講義とそれに対するテストが行われるだけで、国家試験(Nationaol Board)の勉強は各自の責任でパスせよ、というスタンスだ。


しかもかなりの数の臨床実習をこなしつつである。よってアメリカの歯学部生は、個人として自習できる能力と同時にタイムマネジメントする能力がないと務まらない。日本でいう、開業医の経営マネジメント能力に近いものが求められると言える。


もちろん、個人的に論文を読んだり、学習し続けているGPも多いと思うが、個人での学習と専門医課程でのすべてを網羅するようなシステマティックな学びを得ることは難しいだろう。

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